HOME > REPORT COLUMN > コラム > ビジネスモデルマガジン > IR資料から、BMCでビジネスモデルを描く−(株)i-plugさんのケース

IR資料から、BMCでビジネスモデルを描く−(株)i-plugさんのケース

みなさん、こんにちは。
BMIA理事(大阪在住)の岡田です。

時折、「ビジネスモデルキャンバスをうまく使えるようになるコツは?」と問われることがあります。
私の回答は、いつもこれです。

「数稽古です!」

確かに、テクニカルなコツらしきものは色々あろうかとは思いますが、そもそもビジネスモデルキャンバスはデザインツールであり、頭(理屈)で描くものではなく、むしろ手で(正確には、手と繋がった脳?)で描くものというのが私なりの理解です。となると、やはり最重要のコツは「数稽古」となろうかと思います。
その稽古のネタを得る機会・方法は多様なものがありますが、結構オススメかな〜と思うのが、企業が自社ウェブサイト等で公開しているIR資料、中でも、成長途上の企業のものです。

ということで、今回は、関西の雄たるベンチャー企業として知られ、3月18日にマザーズに上場した(株)i-plugさん(https://i-plug.co.jp )
のIR資料から、同社のビジネスモデルをビジネスモデルキャンバスを使い、描いてみました。

画像3

尚、同社は私が実務家教員として「ビジネスモデル」科目の授業(関連含む)を担当している桃山学院大学ビジネスデザイン学部(https://www.andrew.ac.jp/businessdesign/
の連携企業ではありますが、実は私は代表取締役CEO 中野智哉さんはじめ同社の方から事業に関するお話を聞いたこともないし、恥ずかしながら、正直むしろほとんど存じ上げない状態、だからこそ、基本、IR資料だけで、「ここまではBMCで表現できますよ」ということをお伝えするには適しているかと思い、同社を選びました(授業でも使えそうということで一石二鳥ですし🙂)。

で、現在の同社のビジネスモデルとして描いたBMCがこちらです。
IR資料内記述と照合しやすいよう、ふせん内の記述を若干長めにしています。

画像1

尚、これはあくまでもIR資料(「上場に伴う決算情報等のお知らせ」および「事業計画および成長可能性に関する事項」、https://i-plug.co.jp/ir/ より)から読み取った内容を私なりに解釈したもので、同社関係者の確認を経たものでないことはもちろん、提供されているサービスの細部を調べてのものではなく、したがって、私の解釈違いにより、実際とはズレている箇所がある可能性が否定できないことは、ご了解ください。
BMCを描く時に大切なのは、正しいor間違いよりも、自分はどう考えるか、あるいはどういう仮説を描くかということのご理解にもつながろうかと思います。

同社のビジネスモデルは、企業から興味を持った学生に対してオファーを送る「Offer box」(https://offerbox.jp )を媒介としたプラットフォーム型ビジネスモデルです。
プラットフォーム型の場合、異なる複数の顧客層が設定されることが多くなります。その場合は、付箋の色を変えて表現するのが一般的です。今回の場合、レモン色部分が「就職活動中の学生」という顧客層に関するところ、緑色部分が「新卒採用求人企業」という顧客層に関するところです。
今回はあえて詳細な説明は省きますので、ぜひお時間のある時にでも一度、ご自分で前述のIR資料と対照させながらご覧ください。それだけでも、トレーニング効果が期待できようかと思いますのでオススメです。

IR資料には、現在の事業に関してのことだけでなく、将来に向けての戦略に関しても触れられていることが多く、それも、BMCで表現してみることで、より理解が深まります。
同社に関しては、例えば下記のような表現ができるかと思います。

画像2

同社IR資料では、今後の一層の市場伸長がデータをもって語られています。
そこから、基本戦略として「Offer boxのシェア拡大」が掲げられ、そのための具体的手段のひとつとして、「適性検査eF-1Gの収益力向上&新規顧客開拓強化」が置かれているととらえてみました。
中長期的な成長に関しては、やはり新規事業の展開がポイントとなろうかと思いますが、ここで重きをなしてくるのが、ビッグデータとされているようです。

ビジネスモデルキャンバスでビジネスモデルを構造化すると、事業を推進すればするほど、その事業を強くする自己強化ループを把握しやすくなります。逆に言えば、自己強化ループなきビジネスモデルは、少々つらいものがあるわけです。
今回はあらためてループを描いてはいませんが、やはりこのビジネスモデルにもそのループが回っていることがつかめると思います。
そのループが回るにしたがい蓄積されていき、パワーを増していく端的なものが、このビジネスモデルの場合はビッグデータとなるでしょう。それをリソースとして活用しての「新規事業の展開」、これが今後の成長戦略の重要ポイントというのも、こうやってBMCを描いてみると肚落ち感があります。

IR資料を使っての腕磨き、みなさんも取り組んでみませんか?

それでは。

(文責:岡田明穂)

TOP